発明

 

消炎鎮痛パップ剤(湿布剤)のパイオニア・帝國製薬のグループ企業・テイコクファルマケア株式会社より、発明ラボックスの会員・遠藤一代吉(えんどうかずよし)さんのアイデア商品・杖用ショルダーベルト「アルクトモ」が、5月15日にいよいよ発売されます。

発売までの思いをテイコクファルマケア株式会社・代表取締役社長の笠井幹哉氏に伺いました。

 

 

医薬品企業が惚れ込んだ未知の新商品

まず、発明ラボックスとの出会いから教えてください。

笠井:私がテイコクファルマケアの代表取締役社長に就任してちょうど3年になります。この間、弊社に足りない部分を探し続けてきました。企業は「商品力」と「営業力」「管理力」が3つの柱だと私は考えています。

 

その中のひとつ、商品力では、私たちはPB商品をはじめ、様々な商品を企画し、接骨院やドラッグストアに対して提供してきましたが、メインの湿布剤は中身が同じでパッケージデザインが違うだけ。そのため、ここ5〜6年は価格競争に巻き込まれ、本当に苦しんできました。「価格にとらわれない商品を作りたい!」と考えたとき、浮かび上がってきたキーワードが<世の中に無いモノ>。それを象徴するものとして「特許品」を探し始めた1年ほど前に、発明ラボックスの松本社長と出会いました。

 

そこで出会ったのが杖用ショルダーベルトの「アルクトモ」だったわけですね。

笠井:そうです。この発明品は、まだ世の中に無い商品ですが、それだけに、PRや販促が難しい。それを理解しつつも私は「アルクトモ」を見て、「これは世に出していくべき発明品だ!」と直感しました。健康社会へ貢献を目差す私たちのビジョンにも「アルクトモ」がピッタリと合致したわけです。

 

 

“福島応援商品”とした理由は?

笠井:私は2011年の3.11の際、東北地方を担当していました。当日はたまたま東京におりましたが、お客様、取引先様を通じて、その後の苦しみは骨身に沁みています。東日本大震災は日本人が忘れてはいけないこと。そしてお世話になった東北に何か恩返しがしたいという思いをずっと抱いていました。

 

そんな私の前に現れたのが、杖用ショルダーベルト「アルクトモ」だったのです。

当時、発明ラボックスさんは、このアイデアでクラウドファンディングをやっておりました。

 

 

 

このクラウドファンディングで伝えていた、商品を世に出したい思いは2つありました。

 

1つは、二度目の脳梗塞を患い医者から「もう歩けません」と宣告された遠藤さんが「歩きたい」という、強い気持ちから生まれたアイデアを、同じ悩みを持つ人に届けたいということ。

 

2つめは「福島を応援すること」。

発案者の遠藤さん、松本社長はともに福島出身。私も元東北担当として福島は思い入れの深い土地です。このクラウドファンディングで伝えていた福島への思いも引き継ぐ形で「アルクトモ」の製造は、そのまま、福島県の浪江町で被災しいわき市で再起を賭け頑張っているキャニオンワークスさんにお願いをしました。この二つの思いを継承することに、迷いはありませんでした。

 

 

商品化において難しかった点は?

笠井: 商品化の際、大きな壁となったのは3つ。

まず1つは、品質管理です。私たちと工場では「OK」とする基準がまったく違ったので、その調整に苦労しました。

 

2つめが、「アルクトモ」の安全性について。
最初の試作品には安全装置がまったく付いていなかったので、杖がなにかに挟まった、など、負荷がかかると容易にベルトが外れるように工夫を施しました。
私たちが普段販売している医薬品は、効能と同じくらい副作用などに対する安全性が大切です。その考え方を「アルクトモ」に置き換え、安全面での不足分を追加させてもらったわけです。


そして、3つめが価格です。国内生産ではどうしてもコストがかさむため、その分、価格が高くなってしまうのは避けられません。

 

 

それでも「福島で作ること」にこだわる理由は?

笠井:試作段階の当初から価格面で「製造元を変えたほうがいいのでは」という意見はありました。それは価格は安い方がいいに決まっています。しかし「とにかく、まずは福島の人に作ってもらいましょう」と製作を開始。この商品は、初めはいかに、この価値を伝えるか、熱意と販売における工夫の問題なのではないか、と思っております。この商品の価値が伝われば、杖を使う人にとっては、とても助かるものです。このチャレンジ精神持って「アルクトモ」は、福島と共に成長していくことを選びました。

 

 

2025年問題が刻々と迫ってくるなか、御社の目指すものは?

笠井:あと10年も経たないうちに65歳以上が人口の3分の1になり、超高齢化社会になるのは確実です。それに対して企業はどういうものを提供していけばいいのか。事業としてビジネスチャンスを見つけるかが課題です。人口が減れば商品の売り上げも減っていきます。だから、新しいことをやらなくてはいけません。

 

必要なのは、そのような時代の流れに乗っておくこと。海外進出を視野に入れているのもその一環です。「アルクトモ」や健康食品、障害者の方々へのサポートといった新分野への取り組みも、すべては「地域社会に暮らす人の健康と笑顔に貢献できる企業でありたい」というひとつの目標に向かって進めています。

 

話し手
テイコクファルマケア株式会社
代表取締役 笠井幹哉

 

取材
ライター・長北健嗣

 





執筆者
 
株式会社 発明ラボックス
代表取締役 松本奈緒美

数々のヒット発明品を生み出している主婦発明家。

生活の中から生み出されるアイデアとメーカーを結ぶ
発明ラボックスを立ち上げ、多くの発明家を応援している。

NHK「まちかど情報室」や「ヒルナンデス」「ノンストップ」
などで特集。 他マスコミ出演多数。

著書紹介発明はこれで出来る!&アイデア提案編〈発明テキストセット〉